いしか

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行かないで、と言いたい。

❄❄❄❄❄❄❄❄❄❄❄❄❄❄❄❄「すみれさん。荷物ここに置いていいですか?」

「うんっ。そこに置いといて。ごめんねー。ありがとう。」

私と、3つ年下の彼は週末になるとお互いの家を行き来する。
今週は私の家だ。

「今日の晩御飯はどうします?何処かで食べますか?」

「ううん。今日は、私が作る」

「えっ!本当ですかっ!!すみれさんの料理美味しいから嬉しいです。」

「政樹(まさき)は休んでてね。車も運転してくたし、荷物も運んでくれたら」

「えっ!?俺だいじょ………っ」

「だーめ。明日はもう仕事なんだから、今休んでて」

「はーい」

政樹も、私も、日曜日になったら晩御飯を食べてから必ずお互いの家に帰宅している。
私は、それが何だか悲しく思うのだが、政樹はどう思っているのかは分からない。



「はぁー、ご馳走さまでした。」

「はい。お粗末様でした」

「本当に美味しかったです。すみれさんは、本当に料理がじょうずですね。」

「お世辞言っても何もでないわよ。」

「お世話じゃありませんよっ!本当に美味しいんですからっ!」

「分かった…、ありがとう」

「…………。それじゃあ、俺この食器片付けたら、帰りますね。」

「えっ………」

ま、待って……。

「政樹……。」

私の呼びかけに台所へ向かっていた政樹は振り返る。

「はい。なんですか?」

私は、恥しさや寂しさ、色々な感情がぐるぐるしているものの、自分の言いたい言葉を出そうと私は手に力を入れた。

「………ないで………」

「えっ?何ですか?ごめんなさい。聞こえなくて……」

「だからっ!今日は帰らないでっ!!
それと、敬語はもうだめっ!!」

シーンという音が聞こえできそうなほどの沈黙……。
あれ?私、間違った…………?

「帰りません。」

「えっ……?」

「俺、帰りま、帰らない」

そういうと政樹は私に抱きついてきた。

「俺、今日、帰りません。すみれさんと一緒に居ます。」

「えっ、いいの?」

「当たり前ですっ!俺だってもっと一緒にいたいです!」

「………ほんと?」

「ホントですっ!!あ、でも、朝は早くに帰ります。着替えないといけませんから」

「……敬語は?」

「うーん。あともう少し時間下さい」

「……はい。」

「すみれさん。今晩は、一緒に寝ましょうね?」

「……うん。」

こうして私の願いは叶った。
とても……幸せな夜だった。

10/24/2023, 9:30:04 PM