ドルニエ

Open App

 朝か、昼か、宵の口か、真夜中か、一体いつ目覚めるのやら。いや、目が覚めた時が朝なのだ。そう開き直った青年もいたか。まあどうだっていいか。
 ともかく、目覚めの時はわからない。淡雪のような?汚泥のような?屈折した竹のような?大きな小豆のような、眠り。――最後のはつまらないか。
 海の底ように重く、暗く、平穏で、それでも荒唐無稽な世界から。外のことはわからない。だってそうじゃないか、音も、光も、熱もどちらのものかわからず、外のコトと、内の情景とが渾然一体となって奇妙なモアレを描くから。
 さて、そろそろ目醒めの兆しか。眠るのも疲れるもんな。
 さあ、目醒めの時だ。それにしたって首が痛い。
「****!いい加減起きろ」
 ああ、今日も鬱陶しい姉さんの声だ。
「あと2分」
「――119、120。ほら、起きな」
 結局律儀に2分カウントしてくれた声に観念して目を開けると、頭の上に床があった。

8/3/2023, 2:16:03 PM