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『そして、』


そして、ある人はいった。
このミカンは私たちと同じだと。

訳が分からなかった。
私は思わず顔を顰め、その人はまるで子どものようにケラケラと笑った。
私はムッとし口を尖らせた。

このミカンが私らと同じなわけが無い。
その上、結論にたどり着くまでの証明が一切ない。
なぜミカンは私たちと同じなのだ。

その人は今度は小さく、悲しそうに笑った。

ミカンも私たちも同じこの地球の生物だ。
そして、この地球の頂点に君臨していると思っている私たちだが、傍から見れば違うかもしれない。
この世界の半分以上は虫が占めている。
つまり、この星を支配しているのは我々人類ではなく、虫なのかもしれない。


その人は先程捕まえた蝶の羽を観察し、そして数秒後はその蝶を外へ離した。

すまない、話がそれた。その人はフッと息を吐いた。
つまり、私が言いたいことはみかんと私たち人間は皮をかぶり生活していることだ。

外皮という皮、感情という皮、性格という皮、アイデンティティという名の皮、なんなら猫をという皮を被っている人間もいるではないか。
みかんも皮をかぶり生活している。
その結論、人間はみかんと同じだ。

皮を剥かなければその人の本性は見えない。
本当はこんなに甘くて美味しいのかもしれないのに、逆に酸っぱくて果物のはずなのに喉が渇くような代物かもしれない。
だが、一つだけ違うところがある。
人は人の皮を剥かない。
それは何故かって……愚問だな。
この皮を剥けるということに気づかないからだ。知らないからだ。

その人は本日5個目のみかんに手を伸ばした。



10/30/2025, 4:37:49 PM