瑪瑙

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「今日、ふたご座流星群が見えるんだって。見に行かない?」
彼は映画を見たあと、そう言った。
「君には彼女がいるだろ。彼女と行きなよ。」
僕は言ったが、彼は僕と見に行きたいと言ったので、僕は彼とふたご座流星群を見に行くことにした。



彼と出会ったのは二か月前。文化祭の日だった。大学生になって初めての文化祭で少し浮かれていた僕は、映画研究会の作った映画を見ていた。
「「つまんな」」
僕が発した声は彼の声と重なった。驚いた僕が辺りを見回したときに、
「やっぱりそう思う?」
と言ったのが彼だった。彼は映画研究会の一員なのだそうだ。彼は主役を演じていた。彼によれば、この映画は脚本・監督が部長、部員らがキャストなのだそうだ。彼は、台本を初めて見た時に、面白くないと思ったらしい。だが、部長に言える訳もなく、そのまま渋々演じたのだと、彼は言った。

それから彼とは、何度か映画を見に行った。
僕は友達が少ない。そんな僕とは違い、彼には多くの友達がいる。そして、彼女もいる。そんな彼はいつも僕を映画に誘ってくれる。何故そこまで僕のことを誘ってくれるのだろうかと、とても疑問に思っていた。



僕達は映画館から出て、少し遠い高原までやってきた。辺りはもう暗く、空に星が輝いていた。彼は、展望台に早足で向かい、僕と呼んだ。
「おーい。早く来いよー。」


「なぁ、ほんとに僕でよかったのか?」
展望台のベンチに並んで座る彼に僕は言った。
「いいんだよ、君が良かったんだ。」
なんでそこまで僕を誘うのだろうか。聞いてもいいのだろうか。

沈黙を破ったのは彼の方だった。
「俺はさ、常に周りに友達がいてくれるんだ。でも、友達の前で素の自分を出せたことがない。君といる時間はほんの少ししかないけど、本当の自分でいられるような気がするんだ。」「僕と一緒に映画を見に行ってくれてありがとう。これからも誘っていい?」
彼は大人っぽい。大学1年生とは思えないような、おとなっぽさがある。だが、確かに、僕といる彼は無邪気な少年のようなところがある。素の自分を出すのが難しいのは僕にもよく分かる。僕は答えた。
「いいよ。」
そして、心の中でこう願った。


いつまでも君とこんな関係が続きますように

4/5/2024, 10:47:47 AM