『月に願いを』
「月って人間に例えると腹黒っすよね」
「……それはどうして?」
「表側は綺麗でも裏側は汚いらしいっすよ、月って。
腹黒っぽくないっすか?」
「でも月は暗い夜に光を届けてくれるわ」
「それだって自分で輝いているように見えるっすけど、実際は太陽の光を借りてるだけっすよね?
それで綺麗だの美しいだの言ってもらえるんすから、人でいうなら嘘吐きの偽善者みたいなもんっすよ」
「それでも良いじゃない。
"やらない善よりやる偽善"
私達からしたら裏側なんて見えないし、その輝きの違いも分からないわ。
私達が知っている月は、綺麗で美しくて夜空を照らしてくれる素敵な存在よ」
「確かにそうかもしれないすけど……っていうか会長、机に寝転がってマンガ読むの辞めてくださいよ。
誰かに見られたらどうするんっすか……!」
「大丈夫よ。
生徒会室の鍵なら閉めてあるし、仮に見られたとしても適当に取り繕って微笑みかければ一発で誤魔化せるわ」
「はぁぁ……お願いしますよ、ホントに。
会長に憧れてる生徒も多いんすから」
「心配症ね。
なら私は裏の顔がバレないように、大先輩の月にでもお願いしておこうかしら?」
「……あたしも憧れてたんだけどなぁ(小声)」
「何か言った?」
「……なんもないっす」
5/26/2023, 2:34:04 PM