かたいなか

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「希望……きぼう、ね」
「うん、何か1年くらい、すがってられそうなやつ」
「何故よりによって、私なんかに聞こうと、」

「宇曽野主任が『あいつは初恋の相手に4回心をズタズタにされたけど毎回3日で戻ってきた』って」
「なんだその地味に半分本当なウソ野ジョーク」

年度末。この、限りなくブラックに近いグレー企業との付き合いも、早いもので数年。
達成目標とは名ばかりの、ノルマの量も増えてきて、いよいよ転職の可否が脳内会議に上がり始めた頃。
そういえば、誰よりこの職場に向いてなさそうな先輩は、はたして何を1年のモチベに設定してるのかと。
私もそれを心に持てば、もう少し頑張れるのかなと。
ふと、気になって、聞いてみた。

「希望、1年……」
唇の下に、思慮の親指と人差し指をあてて、
「……うん」
長考の後、恒例の「私の意見など役に立たないので置いといて一般論を話します」の顔と抑揚でいわく、

「ストレス解消できるものを見つけたらどうかな」

「……が建前で、ホントは?」
「ん?」
「何か別に自論有るんでしょ。そっちは?」
「……んん……」

3/2/2023, 2:57:04 PM