百加

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キャンドル


「火、点いてる?」
「点いてる!」
「じゃあ灯り消すよ」
「うん!」
電灯が消えた暗闇に、キャンドルに照らされた顔がほのかなオレンジ色に浮かび上がった。

バースデイケーキに飾られたキャンドルの火が揺れる。
この火は自分のためのもの。
きゅっと手を握りしめる。晴れがましくて、でも気恥ずかしくて、綻ぶ口元にも力を込めた。

吹き消そうと顔をキャンドルに近づけると、眼の前で揺れる火が眩くて見蕩れた。ろうが燃える甘いような匂いが強くなって、近づけた顔が照り返しで熱い。

「あんまり長く点けてると、ろうが溶けてケーキについちゃうよ!」
「今、消すからっ」
もう私は大きくなったんだから、一吹きで消さないといけない。急いで大きく息を吸い込んで、胸いっぱいに貯めて、ふーっと強く吹く。
消えない時はこっそり息を継いで一回で消したふりをした。

たくさんの想い出の一つ。小さな火の記憶。



#93

11/20/2023, 6:32:28 AM