「この燃え尽きかけている蝋燭見ろ。
これは貴様の寿命だ。
燃え尽きるとお前は死ぬ」
死神は衝撃の事実を告げる。
だが俺は動揺しながらも、疑問に思うことがあった。
思い切って死神に聞いてみる
「あの、これ蝋燭って言うよりキャンドルでは。
アロマキャンドル」
蝋燭からすごくいい匂いがするのだ。
気になって仕方がない。
すると今まで無表情だった死神は、バツが悪そうに答える。
「閻魔のやつがな。
今どき蝋燭は古臭い。
もっと現代的なオシャレな物を、と言ってこれに変わったのだ」
ああ、上司の無茶振りか。
死神も大変だな
しかし雰囲気が台なしである
「理由はわかったな。
お前も死にたくないだろう。
お前の蝋燭の火を、他の蝋燭に付け替えるといい」
飽くまでも蝋燭と言い張る死神。
「ここにフローラルや柑橘系など色々ある。
好きなものを選ぶといい」
「なんで種類あるんだ」
「一種類だと飽きると、閻魔のやつがな」
「そっか」
そう言うしか無かった。
下手な慰めは彼のプライドを傷つけるだろう
「じゃあ、フローラルで」
「これだ。自分でつけろ」
そう言って死神はアロマキャンドルを俺に手渡す。
緊張するかと思ったが、アロマキャンドルの香りのおかげなのか、リラックスして火を付け替えることはできた。
「ほう、うまいものだな」
「俺もびっくりしています」
俺は正直に言う。
「ところで、このアロマ、なんの花ですか。
鼻がムズムズするんすけど」
死神が考える素振りをする。
「さて何だったか。
部下に命令して取りに行かせたものでな。
部下が言うには、春にたくさん咲く黄色い花だそうだ」
「ちょっと待て。
まさかスギじゃないよな。
俺、花粉症―
ぶえっくしょん」
俺が最後に見た光景は、蝋燭の火がクシャミで消えるところだった。
11/20/2023, 9:22:48 AM