春九色

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僕はときどき、あの頃のことを思い出す。

はじめてその人に会ったのは、確か中2の冬だった。
緊張した顔して挨拶をするその人は、特別美人でもなく、特別醜くもなく、中2の僕の気を引く存在ではなかった。
彼女はその日から、僕の先生になった。
その塾へ通って3年たっていたけど、
あぁ、今日ははじめて見る先生だな。
そんな風な感想を持ったと思う。
いつもの授業。
僕は勉強が好きでもなかったし、成績も普通。
別にそれで満足していたし、将来への欲望もなかった。
先生に特別な何かを求めてもなかったし、そんなもんでよかった。
妙になれなれしい人は好きにはなれなかった。
彼女は、なんか壁作ってたし、こっちもこれ以上踏み込まれない安心感みたいなものはあった。

続く

3/1/2023, 11:07:24 AM