その姿を見たときは焦りました。なんでここにいるのと思いました。引っ越したのに、3年も経つのに、平日の真っ昼間なのに、体を鍛える奴らのことをあんなにも馬鹿にしてたのに、どうして、やばい、バレる、とタオルで顔の右半分をおおいました。だれかと一緒なのでしょうか。ひとりだったらなんなのでしょうか。声は聞こえてきませんでした。さっきまでとは違う汗が背なかをつたい、熱い、寒い。冷静になる必要がありました。更衣室やトイレにひとまず逃げこむのは危険なことのように思いました。目が合ってしまうのもいけませんが、その姿を確認できなくなるのも得策ではありませんでした。左側の大鏡になにかが一瞬反射したような気がしました。でも気づいたのです。3年前よりだいぶん太ったので後ろ姿ではきっと気づかれないだろうと思いました。それからは漕ぎました。ひたすら漕ぎました。引っ越しする前の町までの距離を余裕でこえました。
6/21/2021, 12:13:00 AM