毎年この時期に病室から見える花が好きだ。
大きい音を立てて、夜空に大きな花を咲かせて、私たちに元気を与えて散っていく花火。
いつも静かな小児病棟もこの日だけは花火の音と、小さい子たちがそれを見て喜ぶ声が響き渡る。
昔は、来年も楽しみだと思えていたのに、ここ最近は花火が散っていく度に、来年は見られるのだろうかという不安が心を侵食していく。私は生きていたい。
小さい頃からこの病室が、家の自室のようなものだった。学校に行きたいけれど、行けなくて、病室の窓の外から見える都会のビルの景色が変わらずにずっと一緒にいてくれる存在。この花火たちも一緒だ。
ここ最近、いつもできていたことができなくなっている。寝ていることが多くなった。目を覚まさなくなったらどうしようと。
今日は久しぶりにこの時間まで起きて、花火を昨年と同じように見ている。どれだけの人がこの花火をどこから見ているんだろう。
誰かが知らなくても、この病室でひとり、花火を見ている人がいたんだよと空に放たれる色とりどりの花が知っていてくれたらいいのにな。
私は花火の音が気にならないぐらいに瞼が重くなってきた。まだ見ていたいのに。来年も見れるよね、見たいよ……
8/3/2022, 7:16:57 AM