画面の向こうに一際輝く私の推しがいる。
彼よりも若く見た目が良い俳優はいくらでもいるのに、私はもう何年も彼から目が離せないでいる。
彼のとびきりの笑顔を見るとつられて私の口角は上がり、儚げな泣き顔を見ると胸が締めつけられてしまう。
どんな役にも成り切る彼はきらきら光る万華鏡のように姿を変える。
その一瞬のきらめきを見逃したくなくて、食い入るように見つめ続けていると、いつの間にか画面が見えにくくなってきた。ずいぶんと部屋が暗くなっている。
窓の外はとっぷりと日が落ちていた。もう6時間近く小さな画面に釘づけだったようだ。
椅子から立ち上がりぐーっと背筋を伸ばす。
なんだか現実感がない。彼が放ったきらめきが、画面を越えて私の周りに散らばっているのかもしれない。
そうだったらいいな。
ふわふわと浮足立ったまま、夕飯の支度を始めるためキッチンに向かった。
「きらめき」
9/4/2024, 11:22:06 AM