真野人

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 私は昔からサンタさんを信じてなんかいなかった。
だって、誰かが作ったおとぎ話なんだって誰かが言ってたから。小さい頃はそれを真に受けてしまった。
 もちろん、成長した今でもサンタさんは信じてなんかいない。だけど、私のルームメイトがこんなこと言ってた。
「イブの夜はね、サンタさんの準備期間なんだよ!」
そんなことを言った彼女は夜のうちにどこかへ行ってしまった。

そのまま2年が過ぎてしまった。もちろん、私だって彼女のよく行く場所や職場の近くや様々なところへ行った…!警察に捜索願を出そうとしたが、彼女の戸籍など元からないと言われてしまった。いつまで経っても見つからない。
今日は、彼女がいなくなった日だ。ちょうどクリスマスイブの夜、今日で3年目になるなんて。
「サンタさんの準備期間なんじゃなかったの?」
いつも私のサンタさんになってくれたのは彼女だった。

そんなことを呟いた私の枕元には、彼女がよく抱いて寝ていたぬいぐるみが置かれていた。

『そうだよ。今日まであなたのサンタさんは何度も悩んで悩んで、プレゼントを決めたの。がんばって準備したんだからね!』

『居なくなっちゃったりしてごめんね』

いなくなってしまった彼女は猫に似ていた。



@イブの夜

12/24/2023, 1:05:48 PM