—嘘しか話せない王子様—
ある国の王子様は、魔王に呪いをかけられてしまった。
「先代の王への復讐だ。お前に真実を話せなくなる呪いをかけてやろう」
魔王は、魔法をかけると不気味に微笑んでその場を去っていった。
その時、王子様はベビーベッドの中で、きゃっきゃと嬉しそうに笑っていた。
——
それから五年が経った。
「飯がまずい。なぜ、こんなものが作れる」
「すみません! すぐに作り直して参ります!」
油断するといつもこうなる。
本当の気持ちを伝えられないことに、王子様は困っていた。
「お待たせしました!」
「……」
王子様は黙って食事をした。
「本当にえらそうで嫌い」「傲慢すぎるわ」などと陰口を言われる始末。
この呪いのせいで、家族からも敬遠されていた。王子様はひとりぼっちだった。
「ねぇ、王子様。何をしてるの?」
川辺で魚を眺めていると、少女が話しかけてきた。
「……」
「一緒に遊ぼうよ!」
「嫌だ!」
王子様の本音が、ぽろっと漏れた。
「……王子様って、いつも嘘つきだよね。だって、全然嫌そうじゃないもん」
「本当に嫌なんだ。はやくどこかにいってしまえ」
「うん。わかったよ」
少女は、王子様の唯一の理解者だった。
「じゃあ、あっちでおままごとしようよ」
「いいよ」
「えっ……、じゃあ、虫探しは?」
「……したくない」
少女はにっこり微笑んだ。
王子様の手をとり、駆け出した。
「はやくしないと日が暮れちゃうよ!」
「いいよ、もうはやく帰りたい!」
王子様は心から笑っていた。
少女は振り返って言った。
「うん! いっぱい遊ぼうね!」
お題:特別な存在
3/24/2026, 4:59:17 AM