僕は夜の暗闇の中、家を抜け出して、君が待つ秘密基地まで走った。
もしかしたらいないかもと思ったけど、君はちゃんとそこに仁王立ちしていた。
「遅いぞ。夜も更けちまう」
どんな物語を読んだら、そんな表現を覚えられるんだろう、と僕は君を見てるといつも思う。
僕たちはお菓子とジュースを机いっぱいに広げて、「宴会」をした。お母さんには夜に甘いものを食べたらだめだと言われてるから、僕は興奮していた。
そのあと、天井に広がる星空を見ながら、僕たちは将来の夢について語り合った。
僕は彩子先生みたいな先生になりたいというと、君は笑うことなく、
「きっとなれる。為せば成る、だ」
と言った。
ふと君は時計をちらりと見て言った。
「今日という日にバイバイだ」
僕たちはソーダが入ったコップを合わせた。プラスチックの当たった音が、髭男爵のあの音よりも、鮮やかに響いて消えた。
時計の針は両方ともゼロのところを指した。
2/19/2024, 12:45:14 AM