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積もっているけど、走れない程ではないかな。
車に積もった雪を退けながら私はそんなことを思う。積雪量の多い地域で育った私からしたら、余裕の範囲内だ。
「そろそろ良いかな……」
ある程度雪を落として、車に乗り込む。先にエンジンはかけておいたから車の中は温かい。
肌を刺す夜の空気で夜勤明けのぼんやりした頭が覚醒していて、問題なく運転できそうだ。問題なく、仕事帰りの彼を駅まで迎えに行けそう。驚き、嬉しそうにする彼の顔を想像してにんまりと笑みを浮かべて車を発進させた。
【駅にいるからね】
【本当にありがとう!お礼に何か奢るよ!】
雪道は特に問題なく運転できて、無事に駅まで着いてからメッセージを送る。すぐに既読がついて、感謝の言葉が送られてきた。
そんなことしなくてもいいのに、と相変わらずの優しさに笑ってしまう。別にいいよと返事をする。
普段から尽くしてくれているから、夜勤明けで運転なんて絶対したくないと思っていたのに、進んで迎えにきたのに。
【着いた!待ってて!】
彼から到着を知らされ、わくわくと胸が高鳴る。
メッセージが届いてからすぐ、彼の姿が目に入る。彼は手を小さく振りながら私の車に近づいてくる。
「夜勤明けなのにありがとう!」
車に乗り込みながら、彼が言う。想像以上の喜びを見せるから、嬉しくなってしまう。
迎えに行くというのも、わりと良いものかもしれないと思った。

2024/02/13 「待ってて」

2/13/2024, 10:40:16 AM