はた織

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 黒檀舞い散る宵闇の中、象牙色に淡く光る障子窓の向こうに何かいないかと私は目を凝らしてみるが、格子状の木枠しか浮かび上がってこない。
 明かりは灯されても人気を感じられない無機質な家に呆れ果て、私は窓にぐっと近づき、和紙の細かな隙間を覗き込んだ。隙間の向こうに、鶴が編み針で五本指の手袋を編んでいたら、さぞ面白かっただろう。だが、透けた紙の向こうには物語もたましいもなかった。
 仕方ないから私が障子にへばりついて、不気味な影となって家中の人間を騙してやろう。障子を張れば和の雰囲気が出るだろうと、ただその場の空気に流されているうつろな家にも幽霊が訪ねてきたぞ。風情がある家主なら柳田國男が詠ったように、一目みて恋しいと思いは前世からえにしだと、ときめいて喜ぶだろうよ。
 この光と影の狭間で、障子の向こうにいる人間は私を何と見る?
             (241202 光と影の狭間で)

12/2/2024, 12:58:15 PM