眠り子

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消えない焔

彼の声は、今も耳の奥で響いている。
最後に聞いたあの声を…やっと思い出せた。
「忘れないで、俺は君を永遠に愛してる。どこにいても、何年経っても」
その言葉だけで、心が熱くなり生き返る。
でも、苦しくて、愛しくて、涙が溢れる。
「忘れないでって言いたいのは私もよ。どうしようもないほどに愛していたのに、何で忘れていたんだろう…」

だが、彼にはもう逢えない。
もし私があの異世界に戻れたとしても
彼を知る前の私はいない。

愛した人が「現実(ここ)にいない」ということが、
これほど痛いとは思わなかった。
涙を引っ込めたいのに心は自分を裏切り
涙が止められない。
こんなの誰にも話せない。
きっと誰にも分かってもらえない。

「真実の愛」は手のひらからすり抜けていったのに、
心身だけがまだあの人を求めている。
恋心は、まだ燻っている。
人を愛する心も幸せも何もかも
全て向こうに置いてきてしまった。

10/27/2025, 12:32:33 PM