「3月10日のお題が『願いが1つ叶うならば』だったから、『当時書いたネタが叶わぬ夢と消えました』ってハナシに持ってけば、まぁまぁ」
花粉症消滅、花粉鎮静、宝くじ当選、アレコレ。
「夢」より「欲望」が相応しいものならいくらでも思いつく某所在住物書きである。
「あるいは『叶わぬ夢に近づいた』とか、『叶わぬ夢と諦めるのは早い』とかにすれば、ハッピーエンドも書ける……のか?」
スギ花粉症に至っては、現在、無花粉の杉が存在しており、苗木を育てている段階だとか。
関係者におかれては、ぜひ、全花粉症持ちの希望として頑張ってほしい。
――――――
前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所、某不思議な不思議な稲荷神社で、藤森という雪国出身者が不思議なハムスターとエンカウントしまして、
そのハムスターは、なんと言葉を話すのでした。
「カナリア」と名乗ったそのハムは、藤森とおなじく花が大好きな様子。
1人と1匹はたちまち意気投合しまして、
藤森はカナリアを、自分の自宅アパートに招待して、一緒におやつなど、食うことにしたのでした。
「んんん、これはッ、なかなか美味」
コリコリコリ、かりかりかり!
とっとこカナリア、藤森から出されたカボチャの種やクルミ、それから乾燥したココナッツチップスなんかを、幸福そうに食っては、ほっぺに詰めます。
「ああ、ここに、僕の仲間も呼べたらなぁ。
でも、仲間は僕よりすごく危険だから、『こっち』の世界ではそんなことは、叶わぬ夢だもんな」
コリコリコリ、かりかりかり!
なにやら物騒なことが聞こえた気がします。
とっとこカナリアはそんな物騒を、完全に独り言のように何でもない様子で、
藤森が出してくれたナッツをほっぺに詰めます。
「ところで藤森、さん?」
「なんだ」
「コレ、どこのナッツ?セレクトショップとか?」
「私が食ってるグラノーラの中身だ」
「ぐらのーら」
「最近は、ココナッツチップだのカボチャの種だの、そういうのも入っているやつが。
普通にドラッグストアで買える、600g入り800円とか、500g入り500円とかのタイプだ」
「ナッツの海で泳げる」
「ナッツよりオーツ麦とか、コーンフレークとかの量が多いぞ?それに種類によってはチョコが」
「大丈夫僕気にしてない」
もっもっ、きゅっきゅっ。
よほどカボチャの種を気に入ったのか、とっとこカナリア、種を1個2個と口の中に押し込みます。
「あの、そんなに気に入ったなら、わざわざ頬袋に貯めなくてもカボチャの種くらい、」
カボチャの種くらい、土産で少し用意しようか。
藤森が提案しようとした、そのときです。
「あ!そうだそうだ」
どうやってほっぺたパンパンの状態でしゃべっているのか分かりませんが、
とっとこカナリア、藤森の方を見て言いました。
「藤森さん、きみ、『機構』のひとに会ったね」
「きこう、」
「あの『アテビ』って女のひとさ。
せっかくだから、種のお礼に、情報をひとつ。
信じるか信じないかは任せるけど、彼女は『こっちの世界』とは別の世界から来た異世界人なんだ」
「はぁ。そうか」
「……全然驚かないね。異世界だよ。『ここではないどこか』の世界だよ。もうちょっと、こう、」
「言葉を話すハムスターにそれを言われてもだな」
「あっ。 うん」
そうだよね。
そもそも目の前に、「僕」がこうして居るものね。
そりゃあ、まぁ、「こっちの世界」の常識感覚も麻痺しちゃうよね。うん。
もっもっ、きゅっきゅっ。
とっとこカナリアは妙に納得して、ハナシのネタがスベったように照れて、うつむいて、
機械的に全部のカボチャの種を、ほっぺに詰め込んでしまいました。
(カナリアは、条志さんの仲間?)
藤森が「言葉を話すハムスター」にも、「異世界」にも驚かなかったのには、理由がありました。
藤森の部屋のお隣さんです。
条志と名乗ったそのひとは、カナリアが言ったそのまんまのようなハナシを、
警告として、藤森に話しておったのでした。
アテビが所属している「機構」なる組織は、「この世界」を、発展途上の難民シェルターか何かと勘違いしている連中だと。
「カナリア、」
詳細は過去作3月8日〜10日のあたり参照ですが、スワイプが面倒なので、気にしない。
「『条志』という人間を、知らないか」
ダメもと。ものは試し。
藤森は自分の直感を、カボチャの種でほっぺをパンパンにしたカナリアに、聞きました。
「じょーし?」
種を詰め込み過ぎたらしいカナリアは、ハッと正気に戻って頬袋を整理しようとしますが、
「じょーし、上司、条志。 ああ!知ってるよ」
右の頬袋をいじると左の頬袋が妙なことになって、
左の頬袋を整理すると右の頬袋の数が増えます。
「正直者だから、あいつ自身に、」
あいつ自身に聞けば、話せる範囲まで話すと思う。
そう言いたいとっとこカナリアは、ほっぺをポンポン、ぷにぷに、ぽすぽす。
叩いて押さえて、押してを繰り返し、最終的に、
「ねぇ、ふじもり、ごめん、てつだって」
詰め込みすぎたカボチャの種について、藤森にエマージェンシーコールしたとさ。
3/18/2025, 3:00:16 AM