木弓るん

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通り雨

激しい音と稲光と共に
空から大粒の雨が降ってきた

たまらずそのへんの軒下に走り込んで
ため息をつく
ほんの数秒というのに全身びしょ濡れだ

「ついてないな」

思わず声に出して

「そうでしょうか?」

返事が返ってくるとは思わず
びっくりして横を見ると
スーツをびしょ濡れにした紳士が立っていた

「あなただってずぶ濡れじゃない
 その高そうなスーツだって
 洗濯が大変そうだし」
「あはは、確かにそうだ
 スーツの替えもないし、困ったな」

本当に困っているのかわからないほど
紳士は明るく笑っている

「ですが」

不意に目を細めて言葉をつなぐ

「通り雨の後は空気が綺麗になるんですよ
 それにあなたのような素敵な方と出会えた
 私は幸運です」

その瞬間、急に辺りが明るくなって

「ああ、やっぱり私たちは運がいい」

雨はすっかり上がり
紳士の指差す先には大きな虹がかかっていた

9/27/2024, 3:27:47 PM