燈火

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【優越感、劣等感】


彼は王様。私は彼の、1番目の彼女。
少なくとも3番目まで存在することを知っている。
私は1番目。彼は私を優先してくれる。
他の子との約束があっても、私とデートしてくれる。

2番目の彼女は妬んでいる。
彼の目を盗んで嫌がらせするなんて、心が醜い証拠。
3番目の彼女は平気なふりをしている。
私と親しくしても彼は変わらないのに、必死で可哀想。

彼の持つ『特別』の枠には、彼自身が入っている。
だから、もし都合が悪ければ私の誘いでも断る。
「今度の土曜日デートしようよ」「あー、無理。悪いな」
理由は教えてくれない。知りたいけど、私は聞かない。

土曜日は暇になって、寂しさを紛らわすように街に出た。
服屋を巡り、お昼に選んだ飲食店には彼がいた。
柱で隠れた対面に座る誰かと楽しそうに談笑している。
食事を終えて立った彼の隣に並ぶのは、知らない女の子。

1番目の彼女は私なのに、なんで。
その子は何番目? 私を差し置いて会うほど大事?
思わず追いかけた。二人の姿は街の雑踏に消えていく。
あんな穏やかな笑顔、私の前では見せたことない。

彼の持つ『特別』の枠には、いま誰が入っているの。
彼自身だと思っていたけど、本当はあの子かもしれない。
「ねえ、今度」「ごめん、もう会えない。ごめんな」
理由は聞くまでもなかった。知りたくもなかったよ。

彼は王様で、私は1番目の彼女だった。
1番目だから、物わかりがよくないといけない。
彼の最優先は『特別』。わかっているつもりだったの。
でも。1番目だったから『特別』になれなかったのかな。

7/13/2023, 9:07:29 PM