今は、百貨店の清掃の仕事をしている。
どんなに綺麗にしても、人が行き来すればどうしても汚れるわけで。
ありがたいことに無くならない仕事だ。
閉店後、今日はずっと見て見ぬ振りをしていた汚れにやっと手をつけた。
長年積み重なった汚れは頑固で、いつもより時間がかかってしまった。
急がないと皆帰ってしまい、店に取り残される。
道具を戻し、速攻で着替える。
立ち作業で疲れた脚に無理をさせ、出口まで駆け足で向かった。
そこまでの最後の曲がり角で誰かとぶつかる。
「すみませんっ。」
顔を上げると戸締り巡回中の警備員のおじさんだった。
「おー、こちらこそすまない。いつもお疲れさん。君のおかげでここは綺麗に保たれてるよ。」
その、柔らかい笑顔に暖かさを感じる。
「お疲れ様です。ありがとうございます。そんなこと言ってもらえたの初めてです。」
俯きがちにそう答えると、おじさんは続ける。
「そうかいそうかい、明日もよろしく頼むよ。気をつけて。」
「はい、お疲れ様でした。」
出口へと向かう足取りはなんだか軽かった。
明日も頑張ろう。
9/2/2023, 2:15:25 PM