小音葉

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擦り切れた記憶の彼方
置き去りにされた最初の宝
愛を失い、心を失い、傷を知覚出来ないまま
時を止めていた罪の結晶
それでも懸命に手を伸ばした君へ
私は何度でも伝えよう

失ったものを取り戻す
手にしたものを守り抜く
私たちは何も違わない
いつか骨になるなら、同じ色に燃え上がる
両手を繋いでまずは一歩
息を吸って、言葉を紡ぐ
歪んだ一筆だろうと、世界は作れる
ゼロから君に伝えよう
何もかも落としてしまった君に、私の全てを
例え君が英雄でも悪魔でも
繰り返し愛を与えたいんだ

君は時折ただ静かに
ひとえにひとえに涙を落として
塩辛い目覚めに揺れ惑う
皺だらけの温かい手を、もう形の無い思い出を
抉るように刻み付ける
忘れなくていい、これからもずっと愛していい
仮初の熱で構わないからと、祈るように手を握った

もはや廃れた名であろうと
あるいは、嘘であっても構わない
私は死ぬまで君を呼ぶよ
夜に閉ざされ、散り失せてしまいそうになったなら
柔らかな輪郭をなぞって
この声を辿って
私のそばへ帰ってきてほしい
なので私は伝えよう
昨日も今日も、きっと明日も
私は君を愛してると

(君の名前を呼んだ日)

5/26/2025, 11:14:26 AM