薄墨

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寒い。
屋上から見上げる空は、どこまでも広く、寂しい。

無機質なコンクリートにひっくり返って、大空を見上げる。
雪国のこの地で、真冬だというのに、真っ青に広がるこの大空は珍しい。
太陽の光がポカポカと当たるのも貴重だ。

それにしても寒い。
屋上には壁がないから、全ての風が吹き曝しになる。
冷たい風が四方八方から吹き込んできて、しかもひっきりなしに入れ替わるから、暖かい太陽も太刀打ちできないのだ。

自分の頬が冷たくなるのを感じながら、手を空の方に伸ばす。
冷たい風が手を撫でていって、体に寒さが通り抜けていく。

屋上に登ったのはただの気まぐれだった。
暖房に包まれた室内の空気がなんだか、のたっと鉛のように粘ついている感じがして、外に出たくなったのだ。
特に吹き曝しの場所に。

寒い。
寒いが、空気がスッキリしていて、気持ちがいい。
大空を烏が飛び去っていく。

「時にはなにか、大空に 旅してみたく、なるものさ」
学校で音楽の授業の時に習った歌が、口をついて出た。
確かあれは気球で大空を旅するのだったっけ。

烏は自由に飛んでいる。
すごく気持ちがよさそうだ。
私も空を飛んでみたい。

手を伸ばしたまま、大空を味わう。
もっと空に潜りたい。

大空はどこまでも広がっている。

12/22/2024, 9:01:55 AM