お題『落ちていく』
夕食の後食器洗いを終えて家事が一息ついた頃萌香の母親がリビングで寛(くつろ)いでいる萌香に自分が高校生だった頃の夏の思い出を語り出した。
萌香の母親「今朝ね、とても懐かしい思い出の夢を見てのよ」
萌香「どんなの?」
萌香の母親「パパと出会う前。ママがそうね萌香くらいの歳、高校生だった頃の夢よ」
萌香の母親は夏休みに入ってすぐ、モデルやアイドルの新人発掘オーディションに応募していた。
当時の夢が女優になることだったので、その下積みとして先ほど述べた職業に応募したが全て一次審査で落ちていくのだった。
夏休み期間だったし、大手の芸能プロダクショが募集していたこともあってか募集人数も通常の2倍、3倍はあったと後日オーディションを取材していた雑誌の記事に書かれていた。
それでも諦めることができず、萌香の母は高校生2年生の夏に大人気シリーズのドラマの撮影が近日地元であるという噂を近所の人が話しているのを偶然聞きいたのである。
しかもそのドラマのエキストラを募集しているらしい。萌香の母親は早速応募してみた。結果はまたしても落選してしまったという。
萌香「マミィの夢って女優だったのね」
萌香の母親「そうよ。何度、応募しても落ちるばかりでね……」
萌香「もし受かっていたらパパと出会わなかったの?」
萌香の母親「かも知れないわね(笑)」
ジリリリーンと一本の電話がなった。萌香の母親は電話に出た。電話の相手はパパだったらしく母親は嬉しいそうに話している。その様子を温かいミルクティーの入ったマグカップをスプーンでくるくるとかき混ぜながら萌香は、母親の電話が終わるのを待っていた。
End
11/24/2024, 9:03:01 AM