陽が沈む。
空の端がオレンジ色に燃えている。
高層ビルも、公園の木も、行き交う車も、歩く人も、すべてを黒く塗り潰して。
黒いかたまりになった街は、そのまま一つの大きな生き物になってしまったようだ。
夜に向かって変貌を遂げる街の姿を、ビルの屋上で見下ろしている。
手すりに掴まって片足を跳ね上げる後ろ姿は無邪気な子供のそれに似ていた。
「しゅうまつだねー」
間延びした声で言う。
「そうだな」
短く答えて隣に並ぶ。
地平に沈む太陽の端が、黒い生き物に食べられて無くなってしまったようだ。ならばオレンジの光は黒い生き物の口から漏れた最後の吐息だろうか。
世界の終わりのような不吉な赤は、見ている者の胸をざわつかせる。
当たり前にやって来る週末のように世界の終わりも来るのなら、こんなに不安に駆られる事も無いだろう。
「最後に一緒にいられて良かった!」
「·····俺も」
陽が沈む。
オレンジの光が完全に消えてしまえば、待っているのは·····。
END
「沈む夕日」
4/7/2024, 3:44:40 PM