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花園の中に、果実園があって、それを植えたのは彼女の曽祖父であるという。
サクランボの木や、イチジク、フランボワーズ、胡桃、季節によって姿を変えるその果実園は、ちょっとした祖母の自慢の種であった。
生る果実は、ジャムやコンポートになって、食卓を賑わせた。
特に私は、フランボワーズのジャムが好きだった。
食パンを焼いたのにつけて、バターも合わせて熱々のパンにのせて食べるのが好きだった。
イチジクは、祖母の好物で、赤ワインで、コンポートにするのが好きだった。
秋の今頃と言えば、栗である。
渋皮煮、マロングラッセ、栗ご飯。
とにかく、大量になった栗を拾い上げて消費する。
今日は栗とトウモロコシを合わせたおこわだ。
祖母の冷凍庫は季節の物でいっぱいで、夏になれば甘夏のマーマレードが並ぶ。
秋になれば、イチジクのジャムで、冬になれば、生姜の佃煮。
田舎のネズミと都会のネズミ、どちらが幸せかなんて質問は、多分こうだ。
田舎のネズミが作ったものを、都会のネズミはお店で売って、お金に変えました。
田舎のネズミは、それで、魚を一匹買って、パイ包みにして、都会のネズミと一緒に食べました。
屋上の、観葉植物の草木に、水をやるのが二匹の日課でした。
祖母と祖父の関係は、そういう関係だったらしい。
私は、その話を聞く度、祖母が作ったパイ包みの味を思い出す。
サーモンとジャガイモのパイ包み。
きっとネズミは、お腹が太って、今日も仕事に精を出すだろう。
このまままでは、私の腹回りも危ない。
食欲の秋、ウォーキングに精を出す、私であった。

9/17/2023, 10:23:41 AM