「ねぇ、今日世界が終わるとしてさ」
帰り道、川沿いの土手を私の横で歩きながら彼女は喋る。
夕間暮れの空は燃えつきる前の炭の種火の様に紅くて。
だから彼女はそんな事を言ったのか。
道の石を蹴飛ばして、彼女は言葉を続ける。
「もしも、あの日が沈んで、その時に世界が終わるとしたら」
日は既に地平に足を付けていて、1時間もしない内に沈むだろう。
彼女は私の顔を覗き込むように右下から見上げる。
「そうだったら何をしようか?」
紅く染められた彼女の顔は無邪気な猫の様に、
酷く幼く見えた。
「私はね」
啄むように小さな口が開く、高い声が細く骨に響く。
「きっとここを歩いてる」
小さな手が冷えた手を掴む。
暖かな、小さい手。
「貴女も歩いてくれる?」
くるりとした蛇紋石の様な目が、私を捕える。
幼さの残る顔が若干の不安と期待の入り交じった表情を浮かべる。
私は彼女の手を握り返す、
暖かな、小さな手、私の為の手。
「それが貴女の願いなら、私もそうだよ」
目を細めて、小さく笑う。
この身に意味があるなら、全ては貴女の為の物だ。
彼女は大きな目を輝かせて、咲き誇るように笑った。
手を握りながら強く振って歩く。
燃えるような茜空が遠くで暗く沈む。
世界が終わるみたいに。
#君の目を見つめると
4/6/2026, 3:28:56 PM