大狗 福徠

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君と一緒に
いつだって地獄への道は丁寧に舗装されている。
樹海がバリアフリーになっていくように、
いつだって世界は死ぬまでを付き添ってくる。
生きていることなんてずっとずっと眼中にない。
一緒に死にに行く君は何を考えているんだろう。
舗装された道路の上で、義務を果たすガードレールに沿って歩く君。
私が腹を括った昨日に、せめて伝えたいと思えたほどの人。
君は私の死に飛び込みで参加してきた。
何も言わず、慰めるでも、責めるでもなく。
つつがなくもう二度とない帰路に別れを告げて、いざあの世へ。
しかし直前で君はとんでもない勢いで私の手を引き始めた。
無理やり車に押し込めて、もう会わないはずだった帰路を
爆速で駆け抜けていく。
押し込まれたのは後ろの席だったから君の顔は見えない。
でも時折肩を震わせ嗚咽を漏らすから泣いているのは分かった。
私はしばらく呆然として、事態の異常さに気づいた。
なんで急に私なんかを攫い始めたんだ。
このもう死んだような死にぞこないを。
ぐるぐる車と同じぐらいのスピードで回る頭は
速すぎてろくなことを考えない。
そのうち君の家に着いてしまった。
何度も何度も遠回りをしてついにようやく。
君はなかなか鍵を空けなかった。
ハンドルに突っ伏して、変わらず嗚咽と肩を揺らしていた。
声をかけることはできなかった。かわりに君が口を開いた。
生きて。生きて一緒に。生きて。
ぽつぽつと、けれど変わらずずっと生きてとつぶやく。
貴方は、死ぬ私を見に来たのではなかったのか。
面食らってまた呆然とする。
貴方はとうとう堰を切って大声で泣き始めた。
生きて、いきて。いきてよぉ。しんだりなんてしないで。
わぁわぁ幼く泣きながらその口から溢れる言葉は切ない。
どうしたらいいかわからなくて、
でもここまで来たら答えはひとつだった。
そんなわけで私は今君の朝ごはんを作っている。
君が寝ぼけ眼でパウンドケーキなどと言いやがったので
今日もデザートは泣いて喚いてもパウンドケーキだ。
起きてきたらそのほうけた口に一切れ突っ込んでやろう、あの日の死人に希望を食らわせたように。

1/6/2026, 5:39:09 PM