1.狭い部屋 黒大
俺が大学入学と同時に東京出てきてもう4ヶ月が経った。田舎から上京した人が勝手の違いから中々東京の空気に馴染めないなんて話をよく聞くが、俺は世話好きな知り合いの協力もあってかそれなりにすんなりと馴染めたと思う。そんな世話好きなあいつも肩書きは俺と同じ大学生であり、課題に追われていることも人の家に突然突撃してきたりもするのである。今ただでさえ狭い1人用アパートの一室がさらに狭くなっているのだって昨日の夜こいつが押しかけてきたせいなのだ。あんまりにも酷い顔をしていたので泊めてやったが、大男が2人いるだけでだいぶ窮屈に感じてしまう。ベットを占領されていた俺は気持ちよく眠ることも出来ず、床、というかカーペットの上で寝ていたので体がバキバキになるわで結構散々なわけだ。そんなこんなです少し早めに目が覚めた俺は、体を伸ばすついでにコーヒーをいれに行く。コーヒーをブラックで楽しめるようになったのはいつ頃からだろうかとノスタルジックな思考になっていると、寝ていたはずの黒尾が目を擦りながらダイニングキッチンに入ってきた。
「悪い、起こしたか?もう少し寝ててもいいんだぞ」
「いや、もう十分休まりましたので」
ついでに黒尾の分のコーヒーもついでやる。空はもう明るくなっているが人々が活動を始める気配はない。外に目をやれば高校生と思しき青年がジャージを羽織って自転車を漕いでいった。視線を戻せば、ああは言っていたもののやはり眠いのか机に体を突っ伏しぼーっとシンクを見つめている黒尾が目に入る。今日は講義もないようなので一緒に1日ゆっくり過ごそうか、なんて考えているうちに、自然と笑みがこぼれてしまっていた。
6/4/2024, 2:03:00 PM