みかんの皮に爪を立てる。ぷつり。
そこから指を少し深く沈める。指を鍵形にしてみかんの実を引き出す。
みかんの皮がはじけて、すっきりと爽快な香りがする。
口にひとふさ含むととても瑞々しい。
この果物と同じ名前をつけた猫を飼っていた。
茶トラで、その毛色がみかん色に見えたのでそう名付けた。
みかんはよくしゃべる猫だった。
日田とこちらを見据えて、こちらへ向かって歩いてくる時にも、にゃおにゃおにゃおとしゃべっていた。
玄関に出る時はその前に立ちはだかり、しばらくしゃべる。どこへ行くのかとか何するんだとか、そう言う声音だ。過保護な親みたいな声の掛け方だった。。
帰ってくると玄関マットの上にスフィンクスのように横たわって、やっぱりにゃおにゃお言っていた。
おそらく、おそいとか、変なもん食べてくるなよとかそういう小言だったのだろう。
みかんと言う名前は、物心ついた時についていたから、由来は知らない。
おそらくみかんの箱に捨てられていてみかん色だからとかそう言う理由じゃないかと思う。
みかんは、最期も、何かたくさんしゃべってからこときれた。
最後の最後まで心配していてくれたのかもしれない。
この季節、初めてみかんを食べる時、
もう一つのみかんのことを考える。
みかん、私は今年も元気だよ
12/29/2022, 2:15:14 PM