輪手輪ダーリン

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妄想昔話 2話


このころ西日本では
冬なのに異様に温かい日が続いて
空は隅々まで青く晴れわたり
道や田畑が乾き
時折強く吹く南風により
地面はほこりが立つ有様でした。
後に"長禄・寛正の飢饉"といわれる大天災です。

この村も例外ではありませんでした。
例年は春には一面の花畑が
綺麗に咲きほこって降りましたが
この年は全くありません。

夏にはひどい旱魃がおこり飢饉になる。
村人たちは恐怖に押しつぶされながら
雨をいまかいまかと待ち侘びていました。 

この村人たちが苦しむ光景を
目にする者がいました。
狐族の霊狐という若い女狐です。

霊狐には弟の天狐がいましたが
1年程前に村人に殺されたこともあって
人間を憎んでいたのです。

『弟と仲間を殺した奴らなんか死んでしまえばいいのよ。稲荷の神、宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)様の神罰が下ったのよ』

と吐き捨てて、その場を去っていきました。


次回テーマに続く
"花畑"

9/18/2023, 9:55:33 AM