桜夏

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『手を繋いで』

君との関係性が変わって初めての帰り道。前までは肩がくっつくぐらいの距離で、当たり前のように歩いていたのに。今日はどこか気恥ずかしくて、手が触れるか触れないかぐらいの絶妙な距離を保って歩いていた。なにか話さないといけないのに、浮ついた頭では話題が思い浮かばなくて。私たちを分かつ交差点までのタイムリミットが近づいて来るのを感じながら、私たちの間にはずっと沈黙が流れていた。このままではダメだと、なにか行動を起こさないとと焦る私の思考を遮ったのは、手に感じる君の温もりだった。私の迷いや躊躇いを絡めとるように君の手が私の手をすくいとっていく。
「いやだった?」
上目遣いで覗き込む瞳には、私を信じ切るような、自信がこもっているような、そんな強気な気持ち。それとちょっぴりの不安。少しでも感じさせちゃった不安な気持ちを払拭してあげたい。だから、そっと君が繋いでくれた手を握り返す。
不器用な私の不器用な伝え方だったけど、君はそんな私を見て嬉しそうに笑うから。次の帰り道は絶対自分から手を繋ぐんだと強い覚悟を決める。交差点までの残り数分、1分1秒だって君から離れてたまるかと肩が触れ合う距離まで近づいて歩く。

12/10/2024, 9:35:17 AM