タイムマシーン
未来と過去にいけるなら、
あんたはどちらにいきたいんだ。
女は過去に行きたい、と高らかに答えた。
なんでも、恐竜をこの目で見たいのだそうだ。
なす術もなく死んでしまうだろうけど、生きている恐竜を見た初めての人類になれるから。と。
子供っぽい夢だな、と私は答えた。
なら、どうやって初めて恐竜を見た人類になった、というんだ。生きてもいない奴が論文や写真を発表するわけじゃないだろうに。
私の問いに女は、さも当然といわんばかりに自信満々で答える。
それはもちろん、私の骨だよ。
もし私がきちんと白亜紀に向かえてそこで死んだのであれば、その骨が化石となり未来に残るだろう。あぁ必ず残るとも。
化石が出来上がるためには、運や他のさまざまな要素が必要だ。死体を喰われ形が残るのかもわからないのに。それをこの女は当たり前だという態度で答える。
そんなの残るわけないだろ、
と思わず呆れた顔をして、女を見送った。
次の日から、彼女の姿を見かけることはなくなった。
当然だ、女は言った通り過去に向かったのだ。
私も、私の仕事をしなくては。
今日はあの辺りの発掘調査をしようか。
まだ目当ての骨は見つかっていないのだから。
1/22/2024, 11:40:06 AM