映画のエンドロールが流れ始めた。
張り詰めた緊張がどっと解放されて、俺は、はぁとため息を吐いた。隣を向くと案の定、いつもクールな幼馴染みは何事もなかったようにお茶を飲んでいる。
とんでもない映画を選んでくれたもんだ、と思う。俺はもっと平和で穏やかな映画が観たかったのに。こいつが選んできたのは、地球に隕石が衝突して世界が滅亡する、そんな映画だった。
迫り来る大津波から人々は逃げ惑い、たくさんの人がのまれていった。自分たちの最期を覚悟し、大切な人ときつく抱き合ってそのままのまれた登場人物たちもいた。
片時も目が離せず面白かったけど、何度も観たい映画ではない。心臓に悪い。そして、悲しい。
唯一の救いは、最期に彼らが愛を確かめ合えたことだろうか。ふと考えを巡らせてみる。俺は明日世界が終わるなら、誰に会いに行くだろう。
「おまえ、世界が終わるって知ったら、どうする?」
隣から、幼馴染みが聞いてきた。飄々とした顔して、同じことを考えていたみたいだ。
「どうかな、普通に家族といるんじゃないかな」
「マキに告白しないのかよ」
幼馴染みはフッと意地悪く笑う。俺は即答する。
「いやぁ、しないだろ。最後の大事な時間を費やす程じゃない。告白したってどうせ付き合えないんだぞ?」
「だな」
幼馴染みはつまらなそうにあくびをして、俺の肩に背を預けてずるずるとソファに沈んでいった。
「おまえは?」
俺は聞き返す。
「うーん…」
伸びをするように幼馴染みは唸って、
「多分こうしてるかな」
と答えた。全くもってつまらない答えだ。だけど俺も同じだって思って「だな」と相槌を打った。
「俺ら寂しい男子たちだな」
「まったくだ」
ははは! 俺たちは二人して声をあげて笑った。
『明日世界が終わるなら』
5/6/2024, 3:06:11 PM