NoName

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それは突然の別れだった。

黒い額縁。にこやかにピースした写真。

僕は未だにその現実を受け止められず、

泣きもしない。怒りもしない。

ただ…まだ、日常の中にいた。

学校に行っても、家に帰っても、布団に入っても。

何か、足りない。

まるで、僕だけが世界に、時間に、

取り残されてしまったみたいだ。

そんなある日。

学校にももう行かなくなったある日。

霊感のある友人が家を訪ねてきた。

その友人はただ一言。

「お前…いい加減、成仏しろよ。見てて気の毒だ」

あぁ…そうか。そうだったな。

いなくなったのは、僕の方だったのか。

本当に、それは突然の別れだった。







5/20/2023, 3:42:43 AM