りおち

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肌の焦げる音かと思ったが、それは街路樹の幹の、丁度私より頭一つ高いところで鳴いていた。
彼をやや憎らしく見上げながら、一方でその短い生涯に憐れな思いを馳せていると、私の人生もまるで大差がないような気がした。

寒さを越え、痛みすら感じるあの頃を思い出す。

半年だ。
たかが半年前、私が恋焦がれていたものが、今はどうしようもなく憎らしいのだ。
あの時の私は半年の命だったのだろうか。半年前の私は既に死んでおり、今の私は新しい私に生まれ変わったのではないのだろうか。

ふと思い描いたものに冷笑し、歩き出す。音の主はどこかへ飛んで行った。私はあの者ではない。死んで生まれ変わったのではなく、ちょうど、長い旅を終え、故郷の善し悪しを懐かしんでいるような頃合なのだ。

故に、はじめまして、ではなく、ただいま、なのである。
夏の終わりは、まだ遠い。

8/5/2025, 4:02:18 AM