宝物
誰もが大切に、心に抱えているものがある。友情だとか愛だとか、昨日もらった小さなお菓子の1粒とか。それは誰に伝えるでもなく、ただその人自身の中で大なり小なり特別な意味を抱えている。だから僕は答えた。
「昨日飲んだジンバックの、氷で薄くなった最後の一口。」
時間の価値なんて所詮それだけのもの、人によって変わり得る、どこまでも不確かなもの。そんなものに縋っているから、人生は苦しくつまらない。
「厳しくあるべきも期待すべきも、全ては自分自身なんだよ。」
君は少し驚いたような、呆れたような、初めて見る表情をしていた。
少し酸っぱくて、苦くて、ぱちぱちとくすぐったい。
そんな全てが、僕の宝物。
11/20/2024, 11:22:11 PM