「変わらないものは無いってよく言うけどさ、俺はあると思うんだよね。変わらないもの、」
どこかぼんやりした様子で口にした先生の言葉をふと思い出した。
丁度先生に貸してもらっていた近代文学の本を読んでいたせいだろうか。
そうだったらちょっと嬉しい。
私の生活の一部に先生が入り込んでいることが。
「変わらないもの、…」
先生はああ言っていたけどどうだろう。
あ、でもわたしがにんじんを食べられない事は世界がひっくり返っても変わらなそう。
あと先生を好いている気持ち、とか。
「……意外とあるもんだ。世界は案外ロマンチックじゃないなぁ、」
だから言ったじゃないの、と先生の国宝級のドヤ顔が目に浮かんだ。
先生のドヤ顔はやっぱり可愛いけど、会えないと思うとこんな想像ばかりして余計に会いたくなる。
会えない日まで私の心を甘く蝕んできゅーっと苦しくなる。
はやく逢いたい、それも私の一方通行な想いだけど。
少しは先生だって寂しく思ってくれてるといいな、なんて甘い妄想をしながら布団に包まる。
もし、世界がひっくり返って私が他のどんなことを忘れてしまっても、先生を好きな気持ちだけは覚えていたいと頭の片隅でぼんやりと考えた。
2023.12.26『変わらないものはない』
12/26/2023, 1:54:25 PM