小絲さなこ

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「彼女の季節」


ローカルテレビ番組やラジオから聞こえてくるのは、季節の挨拶のような注意喚起。

『タイヤの交換はお済みでしょうか』
『冬用タイヤへの交換はお早めに』


山に三度雪が降ると里でも降る──という言い伝えがある。

すでに二度雪を冠った山。
今朝は濃い霧で何も見えない。


ルーズリーフを一枚取り出して、彼女は窓の外へと視線を向けた。

「ふふ……たのしみ」

にまにまと笑う彼女。
おそらく、これから始まるウインタースポーツシーズンに思いを馳せているのだろう。

「また勉強中なのにニヤニヤしてる。そんなにスキー場のオープン日決定が嬉しいか」

週明けからの試験が終われば自宅学習期間という名の試験休み。
ちょうどその頃に大雪が降るという予報が出ているのだ。

「だって、新しいウェア買っちゃったんだもん。見る?」
「いや、今はいい」
「えー」
「勉強が先だろ。終わってから見せてくれよ」


筋金入りのスノーボーダーの彼女が、一番輝く季節がやってくる。



────雪を待つ

12/16/2024, 8:26:28 AM