hashiba

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いかんせん、この人と知り合うまでの人生が長すぎた。大した秘密があるわけでもないが、何となく言わずにきたことが結構多い。細かすぎる好き嫌いやら、くだらなすぎる失敗やら。墓場まで持っていくには軽すぎるから、どこかで下ろしてしまいたい。たとえば死ぬ間際。もったいぶって大袈裟に発表して、何それ、と笑って見送ってもらえたら。などと思うけれどこの人の場合、確実に泣いてしまってそれどころじゃないだろう。では、一緒に死ぬのはどうか。やっぱり泣くだろうか。ついついこんな空想に耽ってしまう程度には、この人と過ごす時間は平穏そのものだった。ぼさっとしている間に、本当にこの人と一緒に人生が終わってしまいそうだ。


(題:世界の終わりに君と)

6/8/2024, 8:47:35 AM