「誕生日プレゼントは本当にそれでいいの?」
祖母に聞かれながらも迷いもなく頷く自分。
今日は親戚一同で誕生日プレゼントを選んでいた。
兄弟や歳の近い従姉妹はゲームや洋服など各々の好きな物を選んでいた。
だけど僕の手の上には100円の消しゴム。
それも散々デパートの中を歩きまわり、探しに探してやっと見つけたものが消しゴム。
「物欲がないのかね。」「遠慮してるのかな?」「子どもなのに」
色んな声や視線が僕を刺す。
でも知ってたんだ。
本当に欲しいものはみんな持っていて僕にだけないことを。
歩き回って躍起になって探して、でも代わりになるものなんて見つけられなかったから、やけになって掴んだものが消しゴムだった。
今思えば、あの頃に本当に必要だったから消しゴムを見つけたのかもしれない。
数年後、親は離婚し自分の居場所が分からず、
ひとつの家に定住しない日々が続いたのだが、
それはまた別のお話。
『ないものねだり』
3/27/2023, 6:44:49 AM