【秋晴れ】
ずっと続いていた長雨がやみ、太陽が青空に姿を覗かせる。朝起きて窓の外を見た瞬間、せっかくだから二人でピクニックに行こうなんて言い出した君がキッチンで格闘する音を聞きながらテレビゲームを始めて、かれこれ二時間近くになりそうだ。諦めてコントローラーを手放し、僕はキッチンへと足を向けた。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫! ちゃんとできるから!」
焦ったような君の声。ぐちゃぐちゃになったキッチン。やれやれと息を吐いて、僕は愛用のエプロンを手に取った。
「仕方ないなぁ、手伝うよ」
出かけるのなんて大嫌いだし、ピクニックのための弁当作りなんてもってのほか。でも君に誘われて君と二人で出かけるのなら、そこまで悪くない。秋晴れの空の下ではしゃぐ君の姿を想像しながら、まずは焦げついた匂いを放ち始めたフライパンの火を止めた。
10/18/2023, 10:10:48 PM