近所の公園で男子高校生の遺体が発見された。匿名で通報があったらしい。公園の砂場に人が埋まっている、と。
報道によると、男子高校生は数ヶ月前から不登校気味だったという。警察は、学校や友人間で何かトラブルがあった可能性も含め捜査を進めているという事だった。
「大人しそうな子でしたね。一応挨拶すれば返してくれるけど、まぁ自分から積極的に…というタイプではないですね」
男子高校生を知る近隣住民らしき人物がインタビューに答えていた。
「いじめ…じゃないですかね。ほら最近多いから……」
いくら顔がモザイクで隠れているとはいえ、あまり不用意な発言はするものではないと思った。何より、これを報道に載せるテレビ局の判断もどうかと思う。
だが実際問題、いじめを苦にした訃報は後を絶たない。
日本ではいじめへの対応として、被害者救済という点に重きを置いているが、逆に海外では加害者へ繰り返し指導するという対応が中心になっているらしい。これは、加害者が精神面で問題を抱えている可能性を考慮しての事だそうだ。
男子高校生がいじめられていたかどうかは分からないが、可能性はゼロではないと思う。しかし、砂場に埋まっていた点はどう説明する?いじめの延長線上か。それとも全く別の何かがあって……。
思考するのに夢中になって、いつの間にか横に人が立っているのに気が付かなかった。少し離れた位置に女の子が一人、件の公園を見つめていた。
制服姿なので、恐らく中学…いや高校生か?女子高生らしき人物の視線は、先程から同じ場所を見つめ続けている。初めは砂場を見ているのだと思ったが、どうもそうではないらしい。ジロジロ見るのは少し気が引けたが、そっと視線の先を追ってみる。
砂場の先にあるのは、ブランコにベンチ、あとは木があるだけだった。一体どれを見ている?わからない。
やがて女子高生の頬を涙が伝った。彼女は男子高校生の友人なのだろうか。何となくだが、悲しみの涙には見えなかった。
この事件の真相を知っているのは神様だけか。それとも彼女は何かを知っているのだろうか。私には知る由もなかった。
7/4/2024, 1:20:13 PM