ゆきしろ

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2年前はちょうど、好きな人ができたころだった。

彼女はいるのかなとか、私の事どう思ってるんだろうとか、自分磨きしてた。

だんだん距離を縮めて、体育祭では写真を撮って、ペアダンスを一緒に踊った。

夏休みは2人きりではないけど一緒に遊園地に行った。
沢山写真を撮った。

文化祭ではたまたま一緒に回ることが出来て、調子に乗って苦手なお化け屋敷に入ったりして。
後夜祭で上がった、小さくても立派な花火を見ながらまた来年も回りたいねって話をした。

後夜祭が終わったあと、今度近所で花火大会があるから、今度は大きい花火を見に行こうと誘われた。

珍しく冬に行われた花火大会では、寒くても彼が隣にいるからか、ずっと熱かった。
私は彼の横顔ばかり見ていて、花火に集中したのなんてほんの少しだった。

クリスマスには、初めて2人きりで出かけた。
映画を見て、軽くショッピングをして、イルミネーションを見た。
お互いクリスマスプレゼントを交換したりなんかもして、なんだか恋人みたいだと思った。

そのうち年が明けて、一緒に初詣に行った。
彼が凶で、私が大凶。こんなことあるんだと2人で笑って、逆に運がいいかもね、なんていいつつ、おみくじを結んで帰った。

バレンタインはもちろん彼にチョコを渡して、周りに騒がれたけど、彼も少し顔を赤らめていたのを見てまさかと、少し浮かれた。ホワイトデーのお返しもきた。写真を撮ろうと言われ、撮った写真は、初めて写真を撮った時よりも遥かに距離が近くなっていた。


終了式の日、私の教室にわざわざ来た彼は、私にある手紙を渡した。
こんなこと初めてで、メールで言えばいいのにどうしたのと聞いた気がする。

「照れくさいから」

そう言って笑った彼。改まってどうしたんだろうと思った。

「始業式の日に開けて」

中身は気になったけど、絶対ね、と念を押され、私は大人しく中身を見ずにバッグへしまった。

「ばいばい」

と手を振った彼に、私もいつものように手を振り返した。




そして新学期、張り出されたクラス替えの名簿に、彼の名前はどこにもなかった。
探しても探してもなかった。




海外転勤なんて、聞いていなかった。
最初から言ってくれれば良かったのに。



連絡先もSNSも、気づいたらすべてブロックされていた。



泣きながら開けた手紙には、ギリギリまで黙っていたこと、一緒に過ごした時間はすごく楽しかったこと、自分の忘れて欲しいという旨が書いてあった。




それから1年が経った。
私は彼とすごした日々の写真を、まだ消せていない。


テーマ:1年前

6/16/2023, 1:12:38 PM