大きなマスクで口元を覆う、口下手な彼の唯一の手がかりは目だった。前髪が重くて眉すらもきちんと見えないからくっきりとした二重の目が唯一の手がかりだった。
「一緒に住むか?」
親を亡くした彼の唯一の家族になりたい。元々仲の良い従兄弟ではなかったし、どちらかといえば俺も口下手だ。首を縦にも横にも振らない彼はどこを見ているんだろう。君が紡いできた日々を、今から君が紡ぐ歌を、俺にもっと教えてくれよ。
言葉で返答はしてくれなかったけれど、彼の母親譲りの目がぴくっと動いたのだけが答えだった。
/君が紡ぐ歌
10/20/2025, 2:02:24 AM