郡司

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三日月。私は眼鏡をかけないと、三日月が三日月に見えない。裸眼で見ると、深い紺色の夜空には大きな光る花が咲いているように見える。縦の乱視と横の乱視があってそのように見えるらしい。だから、新月のとき以外で月が見えるときは必ず、空に大きな一輪の花を見る。比較的月が丸いときに、花弁が何枚見えるか数えてみたら、16枚あった。螺旋状にぐるぐると花弁の連なる花だ。

最初からそのように見えていたわけではない。子供の頃は、月は観測されるとおりに見えていた。いつの間にか月は花になっていた。
「心にしたがって見え方が変わる」と昔誰かが言っていた。じゃあ、いつも夜に眠れず涙をためて空を眺めていたせいで、そんな見え方になったのだろうか。今となっては、この見え方も気に入りだ。

もしかして、いつも涙をためている子供を見ていた月が、ちょっと魔法を使ってくれたんだろうか…?
「世話のやける子供だね、ほら、元気出しな」とか。
月が届けてくれる光は太陽からの伝達だ。太陽さんは沈んだ後も此方を気にしてくれるらしい。

1/9/2024, 12:57:08 PM