滅多に起こらないことだから奇跡というのだろう。
勝てないと思われた相手に一矢報いてみせたことも奇跡と言うなら、通じ合うわけがないと思われた相手と心が通じ合ったことも奇跡と言っていい気がする。
奪われて、取り上げられて、全て手をすり抜けていった。諦めて、飲み込んで、「何一つ自分の物にはならないのだ」と無理矢理自分を納得させた。
そうではない現実が、いま目の前にある――。
こんな現実、二度と無い。
これが奇跡で無かったら、何を奇跡と言うのだろう。
「××××××」
向けられる笑顔、名を呼ぶ声。
自分だけのものが、ようやく出来た。
この奇跡を守る為なら、何を敵に回しても構わない。
「·····いま行く」
そんな決意を胸に秘め、男は歩き出した。
END
「奇跡をもう一度」
10/2/2024, 2:10:08 PM