『もしも未来を見れるなら』
私には生まれつきあるちからがあった。
それは普通の人には無いもので、親にそれを言うと、笑って、冗談でしょう。と言われた。
もう高校生にもなると、このことは他人には話すべきでは無い。という雰囲気を感じてからは、誰にもこの話はしていない。
このちからは以外にも使えるもので、何でも「未来」が見えてしまうのだ。しかしそれは私が操作できるものではなく、見えたと思うと、それがすぐあとの出来事だったり、はたまた1年先の事だったりする。
「はぁ。部活疲れたなぁ」
そんなことを呟きながら私は通学路を歩いていた。
そろそろ日が沈みそうで、近くの公園では子供たちが遊んでいた。
元気だなぁ。そんなことを思いながら公園の出入口に差し掛かった時、転がったボールを追いかけて小さい男の子が飛び出してきた。
その男の子を少し目で追って、私は直ぐにハッとした。
道路の方を見ると少し先の方からトラックが走ってきていた。
運転手の人この子が見えてないのかな。
私はとにかく焦って、男の子に向けて叫んだが止まってはくれなかった。
それどころか道路の真ん中で転がったボールを拾うためにしゃがんでいた。
私は何とか助けようと、右足を前に出した。
───そこで私は体を止めた。
次の瞬間、なにかぶつかった大きい音と共に私の目の前から男の子の姿が消えた。
辺の人が音を聞いてか、辺りに集まってきた。
交通事故?トラックが少年にぶつかったんですって。うわぁ。子供は見ちゃ行かん。可哀想。おい、誰か救急車を呼べ!
そんな言葉を背景に、私は家に向けて足を進めた。
私の体は何故か男の子を前に動かなかった。
トラックに引かれる、なんてこと分かっていたのに。
ほんの一瞬、私の体が止まる前、なにか見えたような気がした。
それは確かに
倒れた私のそばで泣く、男の子の姿だった。
4/19/2023, 2:20:26 PM