バスクララ

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「花の香りと共に〜? 私、参っ上ッ! ババーン!」
 よくわからない動きから始まり、勢いよく荒ぶる鷹のポーズをドヤ顔で決めた我が幼なじみを俺は呆然と見つめていた。
 ゴミ出しのために玄関を開けたらすぐ変な口上と共にこれだ。春休みだというのに朝っぱらから勘弁してほしい。
 つーか下スカート……あぁっ!?
 慌てて視線を上にあげると幼なじみ殿は期待に満ちたキラキラ……いやギラギラした眼差しを俺に向けているのが見えた。
 ……俺の反応を今か今かと待っているのだろう……
「……ぃ、いつになくご機嫌だな……」
「ふっふーん、わかる?
実は母の作った練り香水がすっごくいい匂いだったから君にも嗅いでもらいたくてね!
ほらイイ感じの花の香りがするでしょ〜?」
 そう言いながら俺に首を近づけてくる幼なじみ殿に俺は顔を反らすが、フッと香ってくるいい匂いについ鼻を近づける。
 花の香りかはよくわからんが、柔らかく落ち着いた香りだ。それでいて甘く同時に清涼感も少しする気がする。
「ふふっ、君も好きな香りだったようだね!」
 幼なじみの声にハッとなって慌てて顔を遠ざける。
 女性の首筋の匂いを嗅ぐ男なんて、絵面がヤバすぎる。
「それじゃ目的も果たしたことだし私は帰るよ。
ちゃんと毎日歯を磨くんだぞ〜!」
 謎の別れの挨拶をして幼なじみ殿はルンルンで帰っていった。
「……なんだったんだ……マジで……」
 季節外れの台風が直撃したような気分になりつつも俺は当初の目的であったゴミ出しに向かうのだった。

3/16/2025, 12:05:31 PM